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Photo & Essay

◎  スイセン 

あちこちで撮ったスイセンです。

スイセン

前回は枯れたサルビアから、
若山牧水の歌に話が飛びました。
その牧水について、
ちょっとだけ勉強をしました。
にわか仕込みの浅はかな知識ですが、
紹介したいと思います。


スイセン

まずは所沢市神米金にある歌碑の歌です。

のむ湯にも焚火の煙匂ひたる山家の冬の夕餉なりけり

牧水が神米金を訪ねたのは明治37年のことですが、
この歌はずっと後に作られていますので、
神米金で詠まれたものでありません。

大正6年の秋に紅葉の秩父を探勝した折に、
飯能市に1泊して詠みました。
「自歌自釈」に、
こう書いてあるそうです。

宿屋とは名ばかりの百姓家の奥座敷に
蓄音機の音符売の若者と合宿(あいやど)をして
侘しい釣ランプの下に夕餉を済ませた。
お茶とてもない、
大きな薬缶に素湯を入れて持って来た。
その湯を詠んだものである。


飯能市とはいっても、
市街地ではなく、
秩父往還の山間に宿をとったのだろうと思います。
そう考えれば「山家の冬の夕餉なりけり」が理解できます。


スイセン

次は、

かたはらに秋ぐさの花かたるらくほろびしものはなつかしきかな

についてです。

明治42年
「9月初めから11月半ばまで信濃国浅間山の麓に遊べり、歌96首」
の内の第12首だそうです。
その前の第11首は、

胡桃とりつかれて草に寝てあれば赤とんぼ等が来てものをいふ

浅間山麓の秋のさわやかな自然の中での
のんびりとした気分が感じられますが、
実はそうでなかったのです。

牧水は園田小枝子という女性と恋に落ちたのですが、
その恋の破綻が決定的となり、
それに関連して次々起こった事態に
心身ともに疲労困憊し、
どうにもならなくなって、
逃げ出してきた旅だったのです。

胡桃取りをして気をまぎらわし、
草に寝て赤とんぼの話を聞いて・・・
その寝転んでいる「かたわらの秋ぐさの花」が、
「ほろびしものはなつかしきかな」
と語ったのです。

この歌は小諸の懐古園に歌碑があるそうですから、
「ほろびしもの」を小諸城址と結びつける考えもあるようですが、
「ほろびしもの」=「破綻した恋」とする方がよいようです。


スイセン

上の2首は昼間、
自然の中で詠みましたが、
牧水が滞在していたのは小諸の田村病院の2階で、
歌の門下生だった医師の治療を受けてはいましたが、
入院というほどの状態ではなく、
泊めてもらっていたのです。
歌の集まりで若い連中と街で飲むこともありましたが、
本当に愛したのはひとり静かに飲む酒でした。

白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしずかに飲むべかりけり

前述の状況で
東京から逃げて来た小諸の病院の2階で、
秋の夜、
ひとり静かに飲む酒は、
歯にも
はらわたにも
沁みわたったことでしょう。


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黄色い水仙

今日は。

capucinoさんは勉強家です。
牧水の

白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしずかに飲むべかりけり

は存じて居ましたが、その背景などは調べようともしませんでした。

「ひとり静かに飲む酒は、
歯にも
はらわたにも
沁みわたったことでしょう。」

辛かったのですね。
黄色の水仙が好いですね。

2010/01/30(土) 09/52|URL|ijin [edit]

少し体調を崩したのでブログを休み
失礼しました。
若山牧水が飯能に泊まったことを初めて知りました。
学生時代に歩いた北海道で歌碑を見た記憶があり
てっきりあちらの方面だけを彷徨されたかたとばかり思っていました。

神米金は知らないと読めないですよねえ。

2010/01/31(日) 14/42|URL|Saas-Feeの風 [edit]

ijin7wth2さん、
コメントありがとうございました。

市の図書館には、
牧水のことを書いた本は1冊しかありませんでしたが、
私が知りたいと思っていたことがよく書いてありましたので、
たいした手間をかけずに記事ができました。

牧水は大酒呑みだったようですね。

2010/02/01(月) 10/20|URL|capucino [edit]

Saas-Feeの風さん、
コメントありがとうございました。

体調を崩されたのですか?
もう大丈夫でしょうね。

Saas-Feeの風さんもよく旅をされていますが、
牧水は日本中を旅して回ったようですね。
なにしろ「・・・・・けふも旅ゆく」の作者なのですから・・・

2010/02/01(月) 10/25|URL|capucino [edit]

ぬる燗

このところ、頂いた御神酒の一合瓶を
ぬる燗で頂いているマロニエのこみちです(^^;
昨日は、節分の豆、一昨日は、作った赤カブの千枚漬けとよく合いました(^^;
一人酒もいいものですよ(爆
それにしても、真っ白い水仙というのはなにやら寂しいものですね
やはり一番上の和水仙が一番ほっこりと和みます

2010/02/04(木) 11/59|URL|マロニエのこみち・・・。 [edit]

マロニエのこみち・・・。さん、
コメントありがとうございました。

美味しそうですね!
一首献上。

春の夜の酒はぬるめに燗をつけ
千枚漬けで飲むべかりけり

つつましくて、
美しくて、
和水仙が一番ですね。

2010/02/04(木) 16/19|URL|capucino [edit]

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